管理薬剤師というポジションに興味がありますか?あるいは、すでに管理薬剤師として勤務されていますか?
この記事では、
- 管理薬剤師と一般薬剤師の業務の違い
- 管理薬剤師になるメリットやデメリット
- 管理薬剤師になるための条件
- 管理薬剤師に向いている性格
など、わたし自身の経験を通してまとめました。
友人や後輩に相談されたら、「管理薬剤師、一度はやってみたらいいんじゃない?」っていつも答えてます。
ただ性格的に向かない方もいるので、無理する必要はないかと。
キャリアアップのひとつの道として、参考になれば嬉しいです。
管理薬剤師の業務
管理薬剤師の主な業務は
- 医薬品の管理
- 従業員の監督
です。もっと平たく言えば、「モノ」と「ヒト」の管理です。
「医薬品の管理」には、
- 法律に基づいて、医薬品を正しく陳列
- 保管条件を考慮して、医薬品を保管
- 定期的な期限切れチェック
などが含まれます。
「従業員の監督」には、
- 従業員が、法律や社則を守って業務をしているかの確認
- 薬局業務が滞りなく進むような職場環境の整備・シフト作成
などが含まれます。
管理薬剤師は、法律で定められたポジションです。各店舗にひとりずつ配置されます。
「管理薬剤師」が「薬局長」も兼務しているケースがほとんどですが、別の人が担当しても構いません。
管理薬剤師になる条件・資格
一般薬剤師から管理薬剤師になるための条件や資格は特にありません。
とはいえ、店舗の責任者として「医薬品の管理」や「従業員の監督」をこなすことは簡単なことではありません。
一般的に、3年くらいの実務経験を経て管理薬剤師になる方が多いのではないでしょうか。
人員不足の会社などでは、少し早まる傾向にあるようです。また、「管理薬剤師になりたい」という強い意志がある場合、もう少し早く(実務経験2年ほどで)実現可能です。
いずれにしても、薬の知識や人間力など総合的なスキルと、ある程度の現場経験が必要です。
そして、性格的な向き/不向きもあります。この記事の下のほうに、「管理薬剤師に向いているのはこういう人」を紹介しています。参考にしてみてください。
管理薬剤師になるメリット
年収がアップする
管理薬剤師になると、手当がつく職場がほとんどです。
管理薬剤師手当の額は、会社により大きく異なります。まわりを見ていると、相場5〜10万円/月ほどでしょうか。年収に換算すると、60〜120万円ほどアップします。
ただし、「役職手当がつく代わりに、残業代がつかなくなる」というケースもあります。もともとの残業代が多い場合には要注意です。
給与に関しては、自分の職場の社則・ルールを確認してみてください。同じ職場の先輩職員に聞くのもいいと思います。
経験値が増える・人間力がアップする
一般薬剤師が行う日常的な調剤業務に加えて、管理薬剤師ならではの業務が追加で発生します。時間的・精神的に大変なことも多いですが、経験値は格段にアップします。
たとえば、医薬品の在庫管理をしているうちに、
- 廃棄数
- 在庫回転率
などを意識するようになります。自然と経営者視点を持つようになります。
またマネジメント能力も身につきます。「人の上に立つ」「人に指示を出す」という立場でいるためには、高いコミュニケーション能力、意思決定能力などが必要です。
管理薬剤師を経験することは、キャリアアップに繋がります。
現在勤めている会社内での、昇進の可能性がグッと高まります。管理薬剤師や薬局長を数年間経験したあとに、エリア長になる方、さらに数年後に部長などの管理職に就く方などがいます。(一般薬剤師から、突然エリア長に任命されることはまずありません。最初のステップとして、まずは「管理薬剤師」を目指します。)
やりがいを感じる
門前の病院や、メーカーさん、卸さんなどとのやりとりを対応する機会が増えます。対応において、指名されることも増えます。
仕事でお付き合いのある方たちが、自分の顔と名前を覚えてくれるのは嬉しいものです。
管理薬剤師になると、新たな業務にも従事します。それは薬局を運営していく上で欠かせないものです。責任感のある仕事は、人を成長させてくれます。
クレーム・トラブル・相談などが飛んできて、本当に大変なこともありますが、解決・改善したときには大きな喜びもあります。
責任感ある業務を担当する分、やりがいを感じる機会は増えるでしょう。
転職で有利
管理薬剤師を経験しておくと、転職に有利です。過去に数年間経験があるだけでも、プラス評価してくれる会社は多いです。他の薬剤師との差別化が図れます。給与交渉もできます。
転職の面接では、管理薬剤師というポジションを通して得たスキルや学び、管理薬剤師として工夫していたことなどを話すといいと思います。
管理薬剤師になるデメリット
業務量が増える
薬剤師の数がじゅうぶん足りている職場だと、
「管理薬剤師は、(調剤業務を減らして)管理の仕事に集中」ということが可能ですが、現状そのような職場は多くありません。
たいていの場合は、「日々の調剤業務」「雑務」に加えて、「管理薬剤師としての新たな業務」が発生します。
日中の、患者さんが待合室にいるうちは、調剤業務を優先することになります。
そのため、パソコンと向き合ったり、書類作成したりという作業は後回しになりがちです。管理業務のために残業が発生することもあります。
責任やプレッシャーが増す
管理薬剤師は、責任のあるポジションです。店舗での最終判断を下す機会が増えます。「判断を誤ったらどうしよう」というプレッシャーはつきものです。
トラブルやクレーム発生時には、先頭に立って解決していく立場にあります。たとえ自分のミスでなかったとしても、たとえ自分が出社しなかった日の出来事であっても、時には頭を下げる必要があるかもしれません。
その責任感が心地よかったり、やりがいに繋がったりする人は、適任だと思います。
逆に、精神的負担が大きすぎて、短期間で管理薬剤師を辞めてしまう人もいます。
副業・兼業禁止
管理薬剤師になると、副業や兼業ができません。
「管理薬剤師になると他店舗応援も不可」という方針の会社が多い印象です。
管理薬剤師に向いているのはこういう人
人が好きでコミュニケーション能力が高い
コミュニケーション能力が高い人は、管理薬剤師に向いています。
言い換えると、
- モノと向き合っている方が好き
- ひとりでコツコツ作業するほうが好き
という方だと、管理薬剤師が辛くなる瞬間があるんじゃないかなと思います。特に、従業員の多い職場では…。
薬局に限らず、職場ではさまざまな問題が発生します。
対患者さん、対門前、従業員同士、などなど。
管理薬剤師という立場である以上、自分が当事者でなくても、知らんぷりはできません。
「なぜこの人は怒っているんだろう」「なぜ不満があるんだろう」と疑問を持ち、それぞれ人の言い分を聞いて、建設的に問題解決に努める必要があります。
また、管理薬剤師になると、従業員からいろいろなことを相談されます。
- この薬もうすぐ期限切れです
- OTCの陳列どうしますか?
といった薬剤師業務に関わることから
- この日お休みしていいですか?
- ◯◯さんの勤務態度どうかと思います!
といった、シフトや、従業員同士のトラブルなどなど。本当に多岐にわたります。
もちろん、話の内容に応じて優先順位をつけるのは構いません。あまりに私的な内容だと思ったら、上手にかわすスキルも必要でしょう。
とにかく、管理薬剤師になると「人と接すること」は必須です。
職場全体を客観的に見ることができる
目の前の作業をしながらも、まわりの状況を察知し続けられる人は、管理薬剤師に向いてます。
逆に、一包化調剤などに集中していると「もうまわりで何が起きても動じません!」みたいな人は、管理薬剤師には向いていません。
管理薬剤師になると、自身が抱えている調剤業務だけでなく、職場全体が円滑にまわることを常に意識しなければなりません。同僚の動きを見ながら、適切に指示を出せると良いです。特に入社したばかりの薬剤師だと、「なにをしたらいいか分からない」「指示を聞きに行くのも躊躇してしまう」といったケースもあるので、管理薬剤師が上手に仕事を振ってあげるといいと思います。
積極的な声かけをすることで、ミス軽減にも繋がります。
また、同僚がなにを不満に思っているかなどを見極める観察力・洞察力も大切です。
「あれはきっとストレスだったろうな」と思う出来事があれば、「さっきの対応ありがとうね」などの一言をかけられると素敵です。
管理薬剤師も人間なので、性格や価値観の合う/合わないはあると思います。しかし、立場のあるポジションなので、職場ではなるべく平等に同僚と接することも重要です。
分析能力が高い
日々仕事をしていると、患者さんがいきなり怒鳴り込んでくることもあれば、門前病院とのトラブルが発生することもあります。
管理薬剤師という立場であれば、自分が当事者でなくても、自分が出勤していない日の出来事であっても、適切な対応を求められます。
- なにがあったのか
- どうしてクレーム・トラブルが発生したのか
- どのように対応したら解決するのか
など、冷静に分析・対応する必要があります。
この能力に欠けていると、更なるクレームを生んでしまいます。
また、自身の上司に「なにがあったのか」再度説明を求められたり、レポートを提出したりする場合もあります。適切に言語化する能力も必須です。
性格が穏やか・冷静
上司が常にイライラしている職場では、部下は萎縮してしまいます。本来の能力が発揮できません。要らぬミスをしてしまうかもしれません。
「怒り」を「怒り」で返すタイプの人は、管理薬剤師には向いていません。
管理薬剤師は、門前病院や患者さんなど、薬局外の人と関わる機会も多いです。人当たりがよく、好印象だと、関係性もうまくいきます。万が一のクレーム・トラブル発生時にも、冷静に対応できる人が、管理薬剤師に向いています。
ただ「性格が穏やか」=「部下を一切怒らない」「常にニコニコしている」ということではありません。場面に応じて、従業員を指導したり、少し厳しいことを伝えたりする必要もあります。このあたりのさじ加減はとても難しいと感じています。
計画性があり、コツコツ実行できる
管理薬剤師になると、書類作成の機会が増えます。外部への申請書や、会社内への報告書、薬局内での保管用書類などなど。シフト作成を任される場合も多いです。
それらの期限を守るため、コツコツ作業できる人は管理薬剤師に向いています。
またカレンダーやtodoリストなどを使って、きちんとタスク管理できる人も、管理薬剤師に向いています。
「今日はこれをしよう!」と思っていた日に、緊急トラブルが発生することもあるので、ギリギリ行動はNGです。
ひとつひとつの出来事に真摯に向き合える
薬局業務にしても、対人関係にしても、ひとつひとつの出来事に真剣に向き合う姿勢が大切です。必要があれば「ひとり反省会」をしたり、メモをとったり。自分の信頼できる人に相談するのもいいでしょう。
その積み重ねで、経験値がアップします。管理薬剤師としても、大きく成長できます。
最初はなにもかもが初めてで、戸惑うでしょう。しかし、そのうち似たようなトラブルも出てくるので、「あのパターンだな」と思えます。対応も徐々にスムーズになるでしょう。
決断力がある
「あまりに物事を決められない人」「決めたくない人」は管理薬剤師には向いていません。優柔不断の具合にもよりますが、おそらく本人が辛くなります。
とはいえ、ひとりですべてを判断していく必要はありません。
迷ったら同僚に相談するのがいいと思います。相談することで、新しい視点からの意見も得られるし、コミュニケーションにもなります。
とはいえ、最終判断を下すのは管理薬剤師です。
大切なのは「一度決断したことはコロコロ変えない」ことです。
そして、
- 変える場合は周知して変える
- 変える理由をきちんと説明する
という心がけも重要です。
一度決断したことを頻繁に変えたり、一部の人しかいない場所で「やっぱりこうしましょう」などと言っていると信頼を失います。
人を頼れる
管理薬剤師として仕事をするとき、責任感が持つことは必須です。
でも「責任感がある」=「なんでもひとりで対応する」というわけではありません。
すべて抱え込んでいっぱいいっぱいになっていては、本末転倒です。「残業覚悟で、全部自分がやればいいや」と思っていては、他の従業員が伸びません。
上手に仕事を割り振るのも、管理薬剤師としての大切な仕事のひとつです。
仕事を分担することで、他の薬剤師にも幅広い業務を経験してもらえるし、なにより当事者意識をもってもらえます。
どう考えてもキャパオーバーなときに「大丈夫!」じゃなくて、「ちょっと手伝ってもらえる?」と素直にいえるのは、人として素晴らしいことです。SOSをちゃんと出せるのは、いい管理薬剤師だなと思います。
人間力がある
ここまでいろいろ挙げてきましたが、結局は「人間力」。これに尽きると思います。
上に挙げたことのいくつかが欠けていたとしても、人間力があって愛される人であれば、同僚が助けてくれます。患者さんが協力してくれることもあります。
管理者だからって「完璧」である必要はないし、「完璧」を目指す必要もありません。
むしろ「完璧」じゃないほうが、部下にとっては「いい上司」だったりします。上が「完璧」すぎて、まわりの人たちが息苦しくなるケースもあります。
あと、自分が間違っていたときにちゃんと「ごめんね」が言えること。誤魔化したり、ポジションを利用して事実を捻じ曲げないこと。同僚はちゃんと見ています。ずるいことは簡単にバレます。
常に誠実に。自戒を込めて。