薬剤師の働き方は、雇用形態によって大きく異なります。
ブログで薬剤師の方たちに向けた記事を執筆していると、
- 「正社員と派遣薬剤師とでは、どちらが効率よくお金を稼げますか?」
- 「パートと派遣薬剤師の違いはなんですか?」
- 「薬剤師1年目だけど、派遣として働けると思いますか?」
といった質問を受けることがあります。
この記事では、薬剤師の主な雇用形態である
- 正社員
- アルバイト/パート
- 派遣
- フリーランス
の違いをまとめました。メリット・デメリットを挙げて比較しています。転職の参考になれば嬉しいです。
薬剤師の雇用形態による違い・比較
薬剤師の雇用形態による大まかな違いを表にしました。
正社員 | アルバイト/ パート |
派遣 | フリーランス | |
安定性 | ◎ | ◯ | △ | × |
給与の高さ | ◯ | △ | ◎ | 人による |
勤務時間 | 長 | 短 | 契約による | 契約による |
自分時間の確保のしやすさ | △ | ◯ | ◎ | ◎ |
昇進のしやすさ | ◎ | △ | × | × |
店舗異動 | あり | なし | 契約による | 契約による |
それぞれの雇用形態の詳細(メリット・デメリット)は、このあと丁寧に説明します。
正社員薬剤師として働くメリット・デメリット
正社員薬剤師のメリット
最も安定している
まず給与面。
正社員は固定給です。正社員薬剤師は、月給制の人が多いです。たまに年俸制の人もいます。
正社員として働く薬剤師の平均給与は約600万円です。
固定給のメリットは、ゴールデンウィークや年末年始など長期休暇の影響を受けないことです。
一般的に賞与も出ます。(※アルバイト/パートだと、賞与がもらえないことは多々あります)
次に雇用の安定性。
派遣やフリーランスと比べて、仕事を失うリスクが低いのも、正社員として働く魅力です。経営者が「人件費を削りたいな」と思ったとき、最初に契約打ち切りを検討されるのは派遣やフリーランスです。
福利厚生が充実している
会社の福利厚生は、正社員として働く大きなメリットです。
〈正社員薬剤師 福利厚生の例〉
- 健康保険・厚生年金保険・介護保険・雇用保険など、法定福利厚生各種
- 本人あるいは2親等以内の結婚式・お葬式のためのお休みは慶弔休暇(欠勤扱いにならない)
- 学習支援制度(学会費用補助、e-ラーニング研修費用補助)
- 退職金
など
福利厚生の一部は、アルバイト/パートでも適用となります。(※勤務条件による)
昇進・昇給の可能性が高い
他の雇用形態と比べて、昇進・昇給の可能性が一番高いのが正社員です。
管理薬剤師や薬局長、エリアマネージャーなど、役職につく可能性もあります。
昇進にともなって、昇給することがほとんどです。
正社員薬剤師のデメリット
責任感を求められる
「どんな雇用形態であれ、
薬剤師である以上、社会人である以上、一定の責任感を持って仕事にあたることが大切だ!」
…と頭ではわかっていても。
実際の現場では、正社員の責任が重くなりがちです。
患者さんからのクレーム、門前とのトラブルなどが発生したとき、率先して解決に努めるのは正社員!という暗黙の了解があると思います。
パート薬剤師や派遣薬剤師のミスを、正社員がカバーするという場面もよく目にします。
その分、正社員はお給料が高く設定されていたり、ボーナスが支給されたり、昇進の機会があったりします。
ただ「責任感のある仕事」というのは、必ずしもデメリットとは限りません。
人材育成や店舗経営に関わる業務を任されるのも正社員です。簡単な業務ではありませんが、やりがいや達成感もあるはずです。
自由度が少ない
正社員として、ある程度の安定を保証されている分、会社から求められることも多いです。
自分の希望どおりではない店舗異動に応じたり、副業や兼業が禁止だったり。
他の雇用形態と比べて、自由度は少ないです。
休みをとりにくい
正社員の勤務時間は、1週間あたり40時間を目安に定められています。
1日の勤務時間を8時間とすると、1週間あたり5日間の勤務。
土日休みの職場であれば、自動的に「月曜から金曜までは毎日勤務」となります。追加の平日休みがほしい場合は、有給を消化します。忙しい時期だと、希望どおりの休みがとれない可能性もあります。
「水曜(木曜)半休、土曜半休、日祝休み」という、よくある開局スケジュールの職場でも同様です。すでに2日分の休みが確保されているので、追加の休みをとるには有給を使うことになります。
アルバイト/パート、派遣薬剤師の急な欠勤などを理由に、それをカバーするための残業や休日出勤を求められることもあります。
アルバイト/パート薬剤師として働くメリット・デメリット
アルバイト/パート薬剤師のメリット
休みがとりやすい、シフトの融通が利きやすい
アルバイト/パート薬剤師は、正社員に比べて時間の融通が利きやすいです。
正社員に比べると休みの希望を出しやすく、「○時までの勤務がいい」という主張も通りやすいです。
アルバイト/パートを選ぶ薬剤師の多くは、この部分にメリットを感じています。
店舗異動・店舗応援を頼まれない
複数店舗を所有する中規模・大規模薬局の話になりますが。
ある店舗で薬剤師が足りなくなったとき、社内で「人事異動」や「ヘルプ」を要請されることがあります。
店舗異動や店舗応援の対象になるのは、たいてい正社員です。
アルバイト/パートとして働く薬剤師の多くは、
- 「家から通いやすい店舗で働き続けたい」
- 「働き慣れた店舗で、このまま勤務したい」
と考えています。
状況によって、アルバイト/パート薬剤師に
- 「◯◯店に異動してもらえないか」
- 「◯◯店の応援に入ってもらえないか」
と声がかかることもありますが、気が進まなければ断りましょう。あとから「やっぱり嫌です」「通勤時間が長くなって辛いです」と言い出すほうが、迷惑がかかります。
大手薬局や大手ドラッグストアの正社員だと、引っ越しを伴う異動もあり得ます。ご存じのとおり、引っ越しというのは大仕事です。子どもがいれば、転校する必要があるかもしれません。「全国転勤OK!」という条件で入社する場合、給与が高めに設定されることが一般的です。
アルバイト/パート薬剤師のデメリット
他の雇用形態に比べて給与が低い
アルバイト/パートの給与は時給制です。1時間あたり1,800円〜2,500円が相場です。(※地域差・職場差あり)
働けば働くだけ給与が増えますが、休めば休むだけ給与が減ります。
体調不良や家族の都合などで出勤日が減ると、そのまま給与減に直結します。
また、ゴールデンウィークや年末年始などの長期休暇の影響を受けることもデメリットです。
自分としては「お盆もお正月も関係なく働きたい」と思っていても、職場が休みであれば、働くことはできません。
ボーナス(賞与)は期待しないほうがいいです。寸志をくれる会社はあります。
昇給しにくい
正社員と比べて、アルバイト/パートの昇給は難しいです。
年に1、2回ある昇給のチャンスは、一般的に正社員を対象としたものです。
派遣薬剤師として働くメリット・デメリット
派遣薬剤師のメリット
下の記事に詳しくまとめています。
勤務時間などの条件を満たせば、派遣薬剤師も法定福利厚生(健康保険・厚生年金保険・介護保険・雇用保険など)を受ける対象となります。その場合は、派遣先ではなく、派遣会社の規定が適用されます。
派遣薬剤師のデメリット
下の記事に詳しくまとめています。
フリーランス薬剤師として働くメリット・デメリット
フリーランス薬剤師とは、個人事業主です。
「フリーランス薬剤師」という働き方は、まだあまり浸透していませんが、徐々に増えてきています。
派遣薬剤師との大きな違いは「派遣会社に属していないこと」です。
フリーランス薬剤師のメリット
圧倒的に自由
個人事業主は会社に所属していません。
- 1週間あたり何時間くらい働くか
- どこで働くか
- 長期休みを設定するかしないか
すべて自分次第です。
自分の大切なものを優先して、仕事を選ぶことができます。
やりがいなのか、経験なのか、時給なのか、休みなのか。人それぞれです。
時期を決めて集中的に働くこともできるし、自分で長期休みを設定することもできます。
もちろん、副業や兼業も自由です。(フリーランスである限り、「副業」という概念すらないかもしれません。)
スキルや経験を活かせる
フリーランス薬剤師ができる仕事は多岐にわたります。病院や薬局に勤務するだけが、選択肢ではありません。
「ライター」や「ブログ運営」とひとことで言っても、
- 薬の専門的な知識を活かす
- 薬剤師としての就業経験や転職経験を活かす
- 薬剤師とはまったく関係ない分野に挑戦する
など、たくさんの選択肢があります。
薬局やドラッグストアに勤務する場合は個人契約になります。
節税対策できる、お金の知識がつく
フリーランスとして働くのであれば、交通費や学会費用などを経費として精算できます。(※条件あり)
開業届を出して、節税対策も考えましょう。
最初は不慣れなことの連続で大変だと思います。
正社員やパート時代、会社に任せきりだった保険や税金のことを勉強するいい機会だと、前向きに捉えましょう。
フリーランス薬剤師のデメリット
勤務先を自分で見つける必要がある
フリーランス薬剤師は、軌道に乗るまでとても不安定です。
インターネット上でよく「派遣薬剤師は不安定」というフレーズを見かけますが、フリーランスはさらに不安定です。
もともと人脈があるなら別ですが、勤務先をゼロから見つけるのはとても大変です。
そして、ひとつ勤務先が見つかったからといって、安心はできません。いつ契約を打ち切られるか分かりません。次の勤務先がすぐに見つかる保証もありません。
「正社員より自由度高く働きたいけど、自力で勤務先を見つけるのは難しそう」と思う方には、派遣薬剤師という働き方がおすすめです。
健康保険・厚生年金保険を会社が負担してくれない
正社員として勤務していると、社会保険・厚生年金の半額を会社が負担してくれます。
しかし、個人事業主になると、そんな福利厚生はありません。自身で、国民健康保険・国民年金に加入します。
国民年金は、(厚生年金と比べて)将来受け取れる金額が減ります。
フリーランスとして長期的にやっていくのであれば、資産運用などお金の知識も併せて学んでいくのがおすすめです。
薬剤師の雇用形態は多岐にわたり、それぞれにメリット・デメリットがあります。
自身の年齢やライフスタイルによって、理想の雇用形態も変化することでしょう。
転職を検討している薬剤師の方で、「どの雇用形態が自分に合っているかわからない」という方は、ぜひ転職エージェントの担当者さんに相談してみてください。