薬剤師の雇用形態には、正社員・パート・派遣・フリーランスなどがあります。
同じ「薬剤師」でも雇用形態によって、職場での立場や仕事内容、期待される働き方が異なります。
この記事では、実際派遣薬剤師として働いてわかった、歓迎されるスキル・性格をまとめました。
派遣薬剤師に向いている人① 即戦力
派遣薬剤師に求められるのは即戦力です。即戦力は必須条件です。
なぜなら、派遣薬剤師を採用する病院・薬局は「今!薬剤師が足りない」という状況だからです。
「この春から薬剤師になりました🔰これからスキルアップするぞ!」とか
「ここ数年ブランクもあるし、採用薬や分包機には、ゆっくり慣れていこう」
という心持ちでは務まりません。
この記事を読んでくださっている読者様の中には
「(将来的に)派遣薬剤師として働いてみたいな」
と思う薬学部生さんや、新卒薬剤師さんもおられるかと思いますが、
国家試験合格直後は、病院や薬局の正社員として働くことをおすすめします。
正社員として
- 研修を受ける
- 幅広い業務をひととおりこなす
- 人間関係をしっかり築いて、先輩薬剤師や他職種の人たちから学ぶ
という経験が、派遣薬剤師として働くときに必ず役に立ちます。
管理薬剤師や薬局長を経験しておくと、さらに良いです。
派遣薬剤師として働く際、管理薬剤師を務めることはまずありませんが、自分自身のスキルや経験の証明となります。
時給交渉の材料にもなります。
「即戦力でないと役に立てない」というのは、派遣薬剤師として働くデメリットのひとつです。派遣薬剤師のデメリットについては、下の記事に詳しくまとめてあります。
派遣薬剤師に向いている人② 新しい環境になじむのが早い
上でもお伝えしたように、派遣薬剤師には即戦力が求められます。
勤務初日から、挨拶もそこそこに、一包化や鑑査業務を任されます。
過去に勤めていた職場と比較して、
- 処方内容
- 採用薬
- レセコン
- 分包機
などなど、コロっと変わります。
初めて接するものにも、素早く慣れていかなくてはなりません。
もちろん、わからないことは質問すればいいです。
ただ、派遣薬剤師として勤務しているのだから
「早く慣れるぞ!覚えるぞ!」という意気込みが大切です。
「仕事はゆっくりじっくり覚えたい」「急かさないでほしい」という方には、正社員やパートのほうが向いていると思います。
また、いい意味でこだわりのない方が派遣薬剤師としてうまくやっていけます。
派遣薬剤師は、ある程度の経験者でないと務まらないのに、経験者はこだわりを発揮しがちです。
派遣先で「うちはこういうやり方だからね」と言われたときに
と思うかもしれませんが、そっと胸にしまいましょう。
派遣薬剤師は基本的に、派遣先の管理薬剤師や社員さんが求める業務を行います。
「いや、こうするべき!」と持論を展開する立場ではありません。コンサルではないので。
また「あの業務をやってみたい」「これはやりたくない」と自分の好みを主張する立場でもありません。
派遣先の方が
「どうやったら患者さんの待ち時間を減らせると思う?」とか
「他の薬局と比べてどう?」とか
聞いてくれた時には、率直な意見をお伝えしたら良いと思います。
「派遣薬剤師を採用した」のをいい機会と捉えて、「外からの意見を聞きたい」と言ってくれる管理者の方もいます。
信念の強い方、自分のやり方で薬局を運営したい方(※決して悪いことではありません)は、正社員から管理薬剤師になるのがいいと思います。管理薬剤師の仕事には責任が伴い、業務的に大変なこともありますが、やりがいも感じられるはずです。
派遣薬剤師に向いている人③ コミュニケーション能力が高い
上でもお伝えしたように、
派遣薬剤師は、新しい環境に素早く慣れる必要があります。
初めて見る分包機の使い方や、派遣先での独自ルールなど、積極的に覚えていかなくてはなりません。
初対面の人と臆せず会話できる人は、新しいことの習得も早いです。わからないことがあれば、どんどん質問できるからです。
派遣薬剤師として働くなら、「明るく穏やかで好印象な人」でいるよう心がけましょう。
そうすれば、まわりの人たちも話しかけやすくなります。
派遣薬剤師はある程度の経験者であることが多いので、派遣先の社員さんより年齢が上だったり、職歴が長かったりすることも珍しくありません。
派遣先の社員さんが「本当はこうしてほしい」と思ったことを気軽に伝えられるように、
「なにかあったら気軽に言ってくださいね」という姿勢でいることが、円滑なコミュニケーションをとる秘訣です。
もちろん正社員やパートでも、コミュニケーション能力が高いほうが理想です。コミュニケーション不足が、ミスにつながることもあります。
ただ、正社員やパート薬剤師には、人間関係をじっくり築くための時間的余裕があります。
派遣薬剤師は期間限定、かつ即戦力を求められるからこそ、早いうちに心を開きましょう。積極的に意思疎通を図ることがプラスに働きます。
派遣薬剤師に向いている人④ 欠勤・遅刻・早退をしない
欠勤・遅刻・早退をせず、シフト通りに働くことは、派遣薬剤師としてもっとも大切なことのひとつです。
派遣薬剤師を採用する職場は、「今!薬剤師が足りない」という状況です。
シフト以上に働く必要はありませんが、事前に決められた時間数をこなすことは大前提です。
派遣薬剤師の契約は期間限定です。
1ヶ月〜3ヶ月程度の契約もあります。その中で、1週間以上欠勤したり、遅刻や早退が多発したりすると、どうでしょうか?
派遣薬剤師が欠勤した部分を補うのは、派遣先の社員さんたちです。
「せっかく派遣薬剤師を雇ったのに、自分たちの負担が全然軽くならない」という状況に陥ってしまいます。
派遣先に迷惑がかかるし、あなた自身の印象もよくありません。
体調不良や家族の都合など、どうしようもないこともあります。たいていの人は「それは仕方ないね」「大丈夫?」と理解に努めてくれます。優しく接してくれます。
と同時に、「理由がどうあれ、頻繁に欠勤されると困る」と感じる人もいます。冷たいように聞こえるかもしれませんが、これが現実です。
もちろん、正社員やパートでも、欠勤は少なければ少ない方がいいです。しかし派遣薬剤師の場合は、もっとシビアです。
正社員やパートは、基本的には年単位の、長期的な勤務になります。
「数年働く中の1週間を病欠」と、「1ヶ月契約のうち1週間を病欠」とでは、職場へのダメージも、印象もまったく異なります。
派遣先で欠勤があったことは、派遣会社も把握することになります。
欠勤があまりに頻繁である場合、理由が不明瞭な場合は、今後の派遣先紹介に悪影響が出ます。
なぜなら、
「また次の派遣先でも頻繁に欠勤するのではないだろうか」と危惧されるからです。
とはいえ、どうぞ誤解なきように。
「派遣薬剤師をやるなら、どんなに体調が悪くても、家のことを犠牲にしてでもシフトを守るべき!」
とお伝えしているのではありません。
本当に体調が悪い時や、家族のことでお休みが必要な時は、無理をしないでください。無断欠勤などをせず、事情を誠実に伝えることが大切です。
同じ「薬剤師」でも、雇用形態によって、働き方は大きく異なります。現在の自分のライフスタイルや思考に合った雇用形態を見つけることが、幸せに働くコツです。
例えば
- まだ子どもが小さくて、頻繁に熱を出してしまう
- 最近体調が万全ではない
などであれば、アルバイトやパートという雇用形態を選ぶほうが、ストレス少なく働けるでしょう。
「派遣薬剤師」という雇用形態は、誰にでもおすすめできるわけではありません。
派遣に興味のある方には、ぜひデメリットを事前に知っておいてほしいと思います。
派遣薬剤師に向いている人⑤ 契約どおりに働くことができる
派遣薬剤師として働くときは、勤務開始前に契約書を交わします。
契約書には、
- 1週間あたりの勤務時間
- 勤務日数
- 休日
- 契約期間
などが記されています。
派遣先や派遣会社は、契約を守ってくれます。
万が一、派遣先が契約内容を守ってくれない場合は、派遣会社に相談しましょう。
「派遣会社に守られる」というのは、フリーランス薬剤師との大きな違いで、派遣薬剤師として働くメリットでもあります。
派遣薬剤師として働く側も、契約を守るよう努めましょう。
例えば「3月末まで」という契約だったものを、急に「2月末までに変更したいです」と申し出ることは、派遣先にも派遣会社にも大迷惑です。
やむを得ない事情が発生したときは、派遣会社の担当さんに相談するしかないですが、なるべくなら避けたい事態です。
こちら都合での契約変更はマイナスイメージを与えます。今後の派遣先紹介にも悪影響が出るのでぜひ慎重に。
派遣薬剤師に向いている人⑥ 自分で学ぶ力がある
派遣先は「現在、薬剤師が足りないから派遣を頼んでいる」という認識を忘れてはいけません。自分を育ててくれる暇なんてありません。自ら育ちましょう!
病院や薬局の求人情報をチェックすると、「学会費用補助あり」とか「e-ラーニング研修費用補助あり」という学習支援制度を見かけますが、基本的に正社員が対象です。
派遣薬剤師の雇用主は派遣会社です。派遣先の福利厚生は受けられないことが多いです。
とはいえ、薬剤師である以上、常に自分自身の知識を深めたり、スキルを磨いたりすることは必須です。特に派遣薬剤師は職場が頻繁に変わるため、さまざまな科の幅広い薬に対応できなくてはいけません。日経DIに目を通したり、製薬会社のwebサイトなどでコツコツ勉強することが大切です。
繰り返しますが、新卒でいきなり派遣薬剤師として働くのはハードルが高いです。
「将来、派遣薬剤師として働きたい」と思う新卒の方は、即戦力になれるよう、今の環境でスキルや経験を積みましょう。
派遣薬剤師として働いてみたい方は、下の記事が参考になると思います。